Reports北米図書館のマンガ事情やマンガ出版社について学ぶMINT第3回講座を開講!
2025年4月4日

北米図書館のマンガ事情やマンガ出版社について学ぶMINT第3回講座を開講!
MINTプログラムでは、11名のマンガ家・編集者から成る育成対象者が海外展開に先駆けて必要な知識等を得るために、国内外のマンガ専門家を講師とした講座を開講しています。最終回に当たる第3回を4月3日に日本出版クラブにて開講しました。
講座の第1部では、ルーズ氏が「図書館のマンガ: 何が大丈夫で何が大丈夫でないか」をテーマに、図書館や学校に収蔵されるマンガ事情についてオンラインで講義を行いました。低学年からハイティーンまで各年齢層で異なる人気のマンガや、年齢層ごとに推奨されるマンガのジャンルや内容をその理由と共に紹介。また、マンガに馴染みのない図書館員も多いことから、適切な作品を選んでもらうためのブックリスト作成や、マンガの価値を認識してもらうためのワークショップ開催などの啓もう活動にも取り組んでいるとの報告がありました。マンガ購入や関連活動にかかる経費は主に助成金や募金に頼っているため、ときに助成金の打ち切りなどの困難がありつつも、今後も精力的にマンガの有益性を広めていきたいと締めくくりました。
第2部で講師を務めたチャベス氏は、「北米におけるマンガ出版」をテーマに、出版社や流通について講義を行いました。出版社については、大手・中堅・零細などの規模ごとに各社の特徴や、出版しているマンガの主要なジャンルやタイトルが紹介されました。本プロジェクトに参加しているマンガ家の作品に興味を持ってくれそうな出版社や、相性が良さそうな出版社に関する見解も披露され、育成対象者が熱心に耳を傾けていました。また、北米では流通業者がマンガ小売りシステムの基幹であり、マンガの流行を把握しているだけでなく、流通の変化が作品のブランド認知や売上にも影響を及ぼし得るといった情報が提供されました。さらに、出版プロセス全体が日本よりも時間がかかることが多く、出版契約成立から実際に書店に並ぶまでにおよそ2年はかかるといった、業界の実態も披露されました。
最後に行われたQ&Aセッションでは、マンガ出版におけるクラウドファンディングの実体やSNS利用時の注意点についての質問が挙がり、講師のチャベス氏やオブザーバーのアオキ氏、ウッドロー・ブッチャー氏からも回答が提供されました。
今回をもって、全3回にわたり多彩な講師陣によって開講されたMINT講座が終了しました。今後は アドバイザーの個別指導を受けながら、各育成対象者が本格的に海外展開を行っていきます。
【第3回講座概要】
テーマ:図書館のマンガ: 何が大丈夫で何が大丈夫でないか/北米におけるマンガ出版
講師: ジリアン・ルーズ氏(ニューヨーク州公認学校司書・英語教育者)、エド・チャベス氏(マンガ編集者・評論家、日本マンガ翻訳出版社Denpa, LLC.共同創設者)
参加アドバイザー:デボラ・アオキ氏(マンガ評論家・編集者)、クリストファー・ウッドロー・ブッチャー氏(編集者・評論家〈コミック・図書教育専門〉)、岩下朋世氏(相模女子大学学芸学部メディア情報学科教授〈マンガ研究〉)、小田切博氏(フリーライター、マンガ研究家)、鈴木繁氏(マンガ研究者。ニューヨーク市立大学バルーク校准教授)、椎名ゆかり氏(文化庁参事官付芸術文化調査官・メディア芸術担当)